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「多数のわらじ」を履いている?私の、ちょっとだけ息抜きさせてもらえる場所だったり
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・・・先日から納品を急かされていた『かきもの』ですが、ようやっとできました。
例によって、御題はアノ御兄妹です。
(なぜなら、指定があったから。)

で、今回の御題はこちら。
Hotarubukuro5.jpgHotarubukuro2.jpgホタルブクロ、です。
此の時期の花・・・ということで何かいい植物はないかしら・・・と思ったのですが、紫陽花はカラフルすぎるしベタ過ぎる、菖蒲は以前恋次氏でいじったので・・・という感じで、ネタがつきました。
そんな時に、偶々テレビでホタルが都心でも見られる場所があるというニュースを見まして。
そのうちに、ホタルつながりで此の植物を思い出し、更に・・・幼い頃の恥ずかしい、もとい懐かしい思い出も蘇えってまいりまして。
今回は、そんな私の幼い頃の体験もベースにして、いじってみました。
そしてすみません、長いです!!

なお、園芸品種ではなくて、原種のホタルブクロって・・・東日本では圧倒的に紫の花が多くて、西日本では白い花が多いそうです。
そして、結構原種も自生しているそうですよ。
皆さんの周りでもしもホタルブクロが自生していたら、是非色を確認してみてください。

・・・ちょっと長いです。でもネタ切れの末のた打ち回って練り練りしたので、正直纏まりが・・・。
また支店にupするときに、もうちょっと練り練りできたら、なぁ、とか・・・。
(そして毎回思う、「兄様、いい加減『ツン』の回数を減らしたら如何ですか???」と・・・)

では、どうぞ。タイトルはまた考えます。


『ほたるぶくろ』


職務を終え屋敷に戻ったが、常ならば出迎えに来るはずのルキアの姿が無い。
確か、今日は休みだと聞いていたのだが。

「清家、ルキアは如何した?」
「午後から外出をされまして、夕刻にはお戻りになられるとのことでございましたが・・・。」

一瞬、何か・・・嫌な予感が胸の内を過ぎったが、気のせいだと思うことにした。
そして何事も無かったかのように部屋に向かい、着替えを済ませて書を眺めていた。


どれ程の時が流れた頃であろうか。
屋敷の者が騒がしくなった・・・ルキアが戻ってきたのであろう。
・・・が、その騒ぎは尋常ではなかった。
そして、何時もなら取り乱すことのない清家が、慌しくやってきたのである。

「白哉様!!」
「騒がしいぞ清家」
「ハ、申し訳御座いませぬ!!」
「如何したのだ?」

清家から事を聞き終わるか否かのうちに、私は立ち上がり・・・足を玄関に進めていた。


玄関には、ところどころ擦り傷や切り傷を負い、身に付けていた衣を泥に染めたルキアが。
顔にまで泥や・・・うっすらと傷が付いている。
一体何事なのか?野犬にでも襲われたのか?それとも人攫いか?善からぬ輩か?
私は努めて、淡々と言葉を口にする。

「・・・何をしていた」
「帰りが遅くなり、ご迷惑をお掛けいたしました。申し訳ありませぬ。」
「何をしていた、と聞いているのだ。」

ルキアは無言のまま、口を貝のように開かない。

「私には、言えぬことか」
「・・・何もしておりません。本当に何もしていないし、何もないのです。」
「ならば何故そのように顔にまで傷を作り、泥まみれの乱れた姿になっておるのだ。
転んだ、だけでは説明にはならぬな、その有様は。」

声色に若干の怒りを滲ませて問えば、目の前の娘は、諦めたかのようにため息をついた。

「・・・お知りになられたら、朽木の者として有り得ぬ行為だとお怒りになられるどころか、
恐らく呆れられるでしょうけれど・・・・」


ルキアが袂から出したのは、紫の・・・釣鐘のような花であった。
摘んでから時間を経ているらしく、萎れかかっていた。
確か・・・色の違う似たようなものは・・・

「・・・それは?」
「蛍袋、です。」
「・・・蛍袋、か?」

話によれば、流魂街の外れの山で蛍を見かけた、と聞いたらしく・・・
あいにく休みを同じくするものがおらぬため、一人で探しに出たのだ、という。
蛍などこの時期にはまだ早いのでは、と思ったが、此の娘が言うには、今からでもいるのだという。
だが、流石に蛍が舞うには日も高く、見つからなかったようでは、ある。
それでも遅くならぬよう夕方頃には戻るつもりでいたらしいが、蛍を探す途中で・・・その花を見つけたそうである。
最初に見つけたのは紫の花。
それはかつて此の娘が育ったあの土地にも生えていたのだという。
そしてその土地には、紫色の株しかなかったそうであるが・・・・
兎に角、ルキアは山に生える蛍袋を見るのは久しぶりだったらしく、一輪摘んだのだそうだ。
だが・・・ルキアが見上げた少し高い斜面に、白色の蛍袋が生えていたらしい。

「・・・それで?」
「・・・白色の蛍袋は初めて見たし、とても綺麗だったので、どうしても欲しくなって・・・」

紫の蛍袋を傷めぬように袂にしまい、この娘は藪に分け入り斜面を登り、白の花の許に辿り着き・・・

「・・・ですが、足を滑らせてしまって・・・・」

この娘は、斜面から麓・・・紫花の株の傍まで滑り落ちてしまったのだという。
その際、袂にしまった蛍袋を潰すまいとしたようで、結果として体中の切り傷や擦り傷を作り、
衣を泥だらけにしてしまったらしい。

「ですが、ここまでひどいことになっているとは・・・日も沈み薄暗くなっていたので、気付かなくて。」
「それで、白の花はどうした?」
「滑り落ちる際に掴み損ねて・・・結局手にすることは出来ませんでした。」
「そうか。」

目の前の娘は、半分泣き出しそうな目をしながら、途方に暮れたように笑った。

「とても綺麗な花でした・・・夕闇にも染まらずに、白く浮き上がっていて・・・・
まるで、兄様のようだと思いました。」

しかし、やがてその面は徐々に伏せられ・・・終いには私からその表情を見ることが叶わなくなった。

「だから、お見せしたかったんです・・・兄様にも・・・・」

蚊の泣くように、そして消え行くように・・・俯きながら語るこの娘・・・・
その手にしている、夕闇の色に染まった・・・萎れた蛍袋のようだ。
憂いをどこか帯びた様な姿はいとおしくもあるが、此の目にあまり捉えたくは無い。

「・・・軽い切り傷と擦り傷、そして衣を汚した位で済んだのであれば、それで構わぬ。
お前のすることに対して、今更呆れもせぬ。」
「申し訳ありませぬ。」

・・・だが、と、言葉を続けようとした。が、己の意に反して口は動かなかった。
この娘を萎れた蛍袋のような状態のままに、したくはなかったのだが。


ルキアを湯殿に通すように指示し、私は何かを諦めて自室に戻る。
遠ざかる玄関から、侍女がルキアに対して・・・蛍袋を預けるよう、柔らかな声音で宥める様に促しているのが聞こえた。恐らくは、水に挿して様子を見るのだろう。
水を吸い上げるかどうかは五分五分であろうが、落ち込んだあの娘に対する接し方としては賢明なものであろう。
・・・ちりり、と、己の内奥で何かが傷んだような気がした。


侍女の手で一輪挿しに活けられた蛍袋を、私は清家に命じてルキアの部屋ではなく、自室に置かせた。
それから、あることを清家に尋ねた。
聞けば、日こそ落ちてはいたものの、為すのにそれ程困難も無く時間は掛からぬとのことだったので、早速為すように指示した。

一輪挿しに活けられた蛍袋の行方を知ったルキアが、部屋を尋ねてきた。

「何故、兄様のお部屋に・・・しかも萎れていたのに、」
「私に見せたかったのだろう?蛍袋を。」
「ですが、それは白い花のほうで」

と、言いかけたところで、ルキアの言葉が止まる。

「あ・・・」

萎れていた紫の蛍袋は水を吸い上げ、粗方は元の小さな釣鐘の姿に戻っていた。
そして、その傍には・・・

「白い・・・蛍袋・・・」

「・・・屋敷の裏にも、白花なら咲いておる。
茶花として用いることもあるだろうと植えてあるのだ。
もっとも、お前はそのことを知らぬから・・・白花を摘もうとしたのだろうが。」
「・・・・」

屋敷の裏に植えられていた白い蛍袋が、漸く水を吸い上げた紫の蛍袋と共に活けられていた。
私が指示したために気を利かせて大きなものを用意したのだろう、ルキアの摘んできたものと共に活けられ、色合いこそ調和しているが、どこか大きさや高さの釣合が取れていない。
・・・だが、今はそのような事はどうでもよいし、此れはまるで・・・・

「別段、白い花も珍しいものではない。
お前が欲しいと願い、取り損ねたと思ったものは、意外と身近にあったのだ。」
「そうだったのですか・・・しかもこのように立派なものが。
・・・私の見つけたものよりも遥かに。」

目の前の娘は、再び俯いてしまった。


私は・・・お前が初めて見つけて、綺麗だと心から思ったと語った其れを、只もう一度近くで、じっくり見せてやりたかっただけなのだが。
それに、此の娘が傷だらけの泥まみれになりながらも持ち帰った紫の花を、お前が綺麗だと思った其れと同じくらいに、私も綺麗だと感じた。
初めて見た、淡くも深い紫の、奥ゆかしくも素朴な、其れ。

どうすれば、伝わるのか。
・・・口にせねば、伝わらぬこと位分からぬほど、私は愚かでもないが・・・今までも、幾度と無くそうして様々な言の葉を飲み込んできた。
だが、本当にそれで良いのか。
・・・否。

故に、言葉を今度は飲み込まずに、放つ。


「だが、私は逆に・・・お前の持ってきた奥ゆかしい紫の花を初めて見た。
故に最初、お前が持ってきたものがその白い蛍袋と同じ花だと分からなかったのだが。」
「寧ろ私は、紫のほうばかりを見てきましたから・・・紫の蛍袋のほうが、沢山その辺りに咲いているものだとばかり。」
「改めて見てみると、どちらの色も形も、華美さは無くとも、美しいものだな。」
「本当に・・・綺麗ですね、白いほうも、紫のほうも。」
「どうも・・・お前が取ってきたものと、裏に植えられていたもの、大きさで釣合が取れぬが・・・・」
「・・・でも、なんだか私と兄様みたいですね。私は見ての通り小柄ですし。」

水を吸い上げて生気を取り戻した蛍袋のように、活けられた二色の花を見ながら・・・漸く此の娘も生気を取り戻したかのように笑った。

「お前は白い花を知らず珍しいものだと思い、私は紫の花を知らずに珍しいと思った、」
「そうですね。」
「だが・・・珍しい、得がたい、と思うものほど、意外と傍にあるものなのだな。」
「兄様・・・?」


・・・先刻、此の娘に伝えようとして飲み込んだ言葉が、ようやく口から放たれる。
その言葉を聞いたルキアは、それこそ珍しげに私を見上げたのだが。

「故に・・・あまり無茶をして、心配させるな。」



ちなみに、私が最初に幼い頃に見たのは関西で自生する白花です。ルキアの逆ですね。
その後、野育ちの地で紫を見たときの驚きと言ったら!!
で、紫の花を採ろうとして転び、泥だらけになってしまったのも懐かしい思い出です。。。

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無題
さー坊さん、夜分に失礼します。
タロット、葛饅頭と内容の濃い記事を拝見し、感心しきりでございました。

そしてこの『蛍袋』はまたなんて綺麗な!!
色で表現できる義兄妹ならではの色彩の綺麗さと、エピソードの綺麗さと…
さー坊さんの発想の豊かさが余すことなく発揮された、珠玉の作品だと思います。

ごめんなさい、拙宅へいつも素敵なコメントを下さったり心配して頂いたりしているお礼を、きちんとお伝えしたかったのですが、睡魔が襲ってきて、文章が怪しくなってきました。

申し訳ありません。
また顔を洗って出直しますので…

「ホタルブクロ」とても気に入りました。
素敵な作品をありがとうございました!!
ローガン渡久地 URL 2010/06/18(Fri)01:26:07 編集
Re:無題
ローガン様、いつもお世話になっております。
そして先日は20000HITおめでとうございます
(でも私は踏み外しました・・・実は狙っていました
ちなみに、拙宅はカウンターを外してしまったので、今はどれくらいの人にご覧頂いているのかよく分からない状態です。)


『ホタルブクロ』は、本当にネタ切れ(そしてエネルギー切れ)の上、どこからともなく漂う悪友からの『リクエスト』という名の圧力の中、苦し紛れに「えいやっ」と生まれてきたものでして・・・。
ですので、非常に喜んで頂けたようで、背中がとても(恥ずかしくて)むずむずする一方で、本当にほっと致しました。
ただ、ちょっと悪友から『言い回しが分かりにくい』『もう少し状況説明しろ』等々のクレーム・・・ではなくて有難い意見を頂いたので、支店にupする際にはもう少し練ってみようかと思っています。
(力尽きてそのままupする可能性も・・・その時はごめんなさい。)

そうそう、ローガン様に大層気に入っていただけた「柘榴」ですが、リハビリも兼ねて狂言回し役視点のオマケを書こうかと思っています。
本編が全て登場人物の会話や脳内思考のみで綴られ、オマケで真の主人公?視点で語られていますが・・・やはり狂言回しのお嬢さんが具体的に何を思ったか、についてもちょこっとだけフォローしたいな、というのがありまして。
最初のオマケ同様、本店(ブログ)には掲載するつもりは無いのですが、upの際には記事で事務連絡と称してお知らせ致しますので。。。
さー  【2010/06/20 20:43】
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女性
職業:
多数?の草鞋履き(最近少し減らしました)
趣味:
読書、音楽弾き聴き、きもの、草いじり、料理、・・・あと、かきものとか。
自己紹介:
諸般の事情から「多数の草鞋」を履くことになってしまった私です。
息抜きとして、日々のことや趣味のことも書けたら良いなと思っています。

☆名前について☆
ここでは“さー”を使っていますが、“さー坊”というのも時折使っております。
(メール送信時は、名字まで付いてます。)
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