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先日から皆様に『ご意見伺い』をさせていただいていた件で、少しずつですが形にしていこうかと・・・ゆっくりもぞもそ。
というわけで、『かきもの』で過去を語りましょうか。
御題はこちら。
ダリアです。和名は『天竺牡丹』。
コレはお盆の時期に田舎の仏壇に供えられている花(そしてそのために畑に植えられている花)という記憶が。
実際、祖母の家ではそうでした。コレはお盆の花でした。
でも、品種も沢山あって、華やかさも半端無いと思います。
そして・・・本当は涼しくなってきた秋口あたりの植物だと知ったのは、先日のこと。。。
今回は、この花の形から。
綺麗な同心円に開く姿や色鮮やかな花の色から思いついたものです。
そして「昔の話」を語るのは・・・今も結構昔のことを引きずっている小柄な女傑のアノ方。
今回はちょいと長いのでご注意ください。
・・・というわけで、小柄な女傑、砕蜂さんで。
今回で2回目でしょうか。
(今の彼女からは有り得ないような設定を加えておりますが、ご容赦ください。)
『 Nostalsia for ・・・ 』
・・・常に危険な任務を遂行し、死と隣り合わせである『刑軍』。
そこの総司令官である私もまた、常に死と隣り合わせである。
つまらぬものに気を取られ、
結果的にそれが原因で命を落とすようなことがあってはならない。
ただ私が為すべき事は、任務をこなすこと。
・・・敵とみなしたものは全て倒す、ただそれだけ。
他には何も、・・・そう、何も・・・・
「貴女らしくない怪我を。」
「私もそう思う。手を煩わせてしまって申し訳ない、卯ノ花隊長。」
「私は此れが仕事ですもの。構いませんよ。
ですが・・・あまり気を張り詰めないで、たまには力を抜いても良いのでは?」
「其の隙を衝かれては、二番隊、そして刑軍の恥。
ましてや其の頂点である私が」
「それもそうですが・・・今お薬をお持ちしますね。少しでも治りが早まるように。」
「ありがとう。」
ふと・・・診察室の窓のほうを見やると、色鮮やかな天竺牡丹の花が目に飛び込んできた。
「花か・・・生け花を嗜む卯ノ花隊長らしいものだな。」
同心円に開いた赤や黄、白、橙、桃色・・・黄緑まで最近はあるのだろうか。
形も普通の菊のようなものから、八重に開くもの、さては鞠のように丸いものまであるようだ。
そして濃い色をした茎や葉が、より花の鮮やかさを際立たせる。
・・・それはまるで、夜空に咲き誇る大輪の花火のようだ。
「・・・花火・・・か・・・。」
そうだ・・・花火・・・・
私が初めて花火を見たのは、刑軍に入って最初の夏のことだったな。
今でこそ(自分の流儀にそぐわぬ)大砲のような卍解を用いる私ではあるが、
あの当時は・・・実は大砲のように大きな音で打ちあがる花火が苦手だった。
戦いの中であのような爆撃を伴うような戦術は使わぬし、
幼い頃から戦うことだけを教えられ、常に戦いの中に身を置いていた私にとって
花火という娯楽は無縁のものだったのだから。
それ故であろうか・・・大音響に慣れていなかったのだろう、恐らくは。
だから、其の年・・・
花火が上がるから見に行こうと刑軍の者に誘われたとしても、
「興味が無い」「鍛錬や修行など、他にすべきことがある」と言って断っていた。
今思えば、怖がりな己を晒したくなかったのだろう。
当時の刑軍は今と違い『和気藹々』としていた。
共に死線を越えて戦う仲間、といった雰囲気があったのだ。
それは当時の総司令官であった夜一様の方針であったろうし、彼女の人柄ゆえのことでもあったと思う。
そのような気質故に・・・皆も気楽に誘ってくれたのだろうけれど、
そこまで心を開けるほどの余裕は、当時の私には無かったような気がする。
何せ、私には・・・
先に刑軍に加わり、そして『あっさりと』死んでいった六人の兄らとは違うのだ、私が蜂家を背負っているのだ、といった妙な気負いがあったから。
だが、
「なんだ砕蜂、お主、折角の花火を見に行かぬのか?」
「よ、夜一様!!」
皆を送り出した私の目の前に立っていたのは、夜一様だった。
ニィ・・・と、何かを企むような、いや面白げなことを思いつかれたような顔をされながら。
「わ、私は別に花火など興味は」
「そんなことでは、中身の無い詰まらんヤツにしかならぬぞ。いくら強くなることができたとしても。」
「しかし・・・」
「たまには息抜きも大切なことじゃ。いつも張り詰めていては、逆に感覚が鈍るものじゃ。
ほれ、行くぞ。」
「え、ぅわっ!!・・・」
私が夜一様の小脇に抱えられてたどり着いた場所は・・・
「・・・っ!!」
地面に降ろされた直後に鳴り響いた轟音。
私は思わず、耳をふさいで座り込んでしまっていた。
其れもそのはず、其処は花火打ち上げ場所の真下に近い場所だったのだ。
花火を好む者からは「花火の特等席は真下」と言われるらしいが、
・・・当時の私にとっては拷問に近いもの!!
「なんじゃ砕蜂、お主、花火が怖いのか?」
「ち、違いま・・・きゃぁっ!!」
破裂に近いような音が至近距離で聞こえて、私は怖くて見上げる余裕なんて無かった。
今の私からすれば、どれだけ臆病だったのか・・・と思う。
だが何よりも・・・
夜一様に笑われているのでは無いか、呆れられてしまったのではないか、
失望されているのではないか・・・・
そう思うと、余計に怖くて顔を上げることが出来なかった。
顔を上げたら、きっと夜一様のお顔がこの目に映るから・・・。
そのとき、
耳をふさいでいた私の手の上に、何か温かいものが重ねられた。
驚いて顔を上げると・・・
夜一様のお顔がこの目に映ることは無く、その代わりに・・・
とおく微かな、どーん、という打ち上げ音が聞こえ、
其の直後、
「・・・うわぁ・・・・」
この目に映し出されたのは、頭上で同心円に開いた、それはそれは綺麗な紅色の花火だった。
ずっと私は・・・その美しさに心を奪われ、空を見上げ続けていた。
鉄紺の空に咲く、色鮮やかな光の華を。金や銀の光の雨を。
「こうすれば、怖くないじゃろ?」
「・・・夜一様・・・」
花火の合間に一瞬だけ手が緩み、夜一様の声が聞こえてきた。
恐る恐る振り返ると、ニィ、と悪戯っぽく笑うお顔が目に映った。
まるで頑なで怖がりな妹に少し呆れながらも、面倒を見てくれる姉のような。
「たまにはこういうモノもいいもんじゃ。
戦いの事ばかり考えていては、脳が疲れてしまっていざというときに動けぬもの。
それがどういうことを意味するか・・・お主ならわかるじゃろ?」
・・・そう、夜一様が私の背後に立ち、後ろから耳を塞いでくださったのだ。
厳密には、耳をふさいでいた私の手の上から、御自分の手を重ねて塞いでくださったのだが。
「ほれ、次が上がるぞ。」
再び私の耳は、自分の手と・・・其の上から重ねられた夜一様の手で塞がれ、
私は夜空をずっと見上げ続けていた。
・・・手が疲れたでしょうに。
あの時・・・最後の花火が打ちあがるまで、ずっと塞いでいてくださったのだ。
今この目に映る天竺牡丹のように・・・
暗色の中に浮かぶあの色鮮やかな光の色は、様々な事を経てたどり着いた今も、
記憶の中で色褪せることが無い。
・・・そしてあの手の温かさも。
「懐かしいものだな・・・・」
「あら?天竺牡丹をご覧になって、何か思い出されたのですか?」
いつのまにか戻ってきていた卯ノ花隊長が、にこやかに笑っていた。
「いや、下らない昔の話だ。」
「そうですか?」
それだけではないでしょう?と言いたげな卯ノ花隊長・・・・
やはり見透かされているようだな。
「それとついでに・・・
たまには、息を抜くのも悪くは無いだろう、そう思っただけだ。
あまり張り詰めていても、張り詰めすぎて感覚が鈍ることも有るだろうから。」
「・・・そうですよ?」
手の上から塞いでくれたのは、私の場合、育ての母でした。
これも幼少の頃の思い出が元になってます。
自分でクラッカーを鳴らすときは平気なんですけれどね。。。
というわけで、ご意見を頂いた『花火』ネタ、こんな感じになりました。。。
当初頂いたアイデアでは「花火を見上げていて昔見た花を思い出す」といったお話のはずだったのですが、逆になってしまいました。すみませぬ。。。
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息抜きとして、日々のことや趣味のことも書けたら良いなと思っています。
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