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「多数のわらじ」を履いている?私の、ちょっとだけ息抜きさせてもらえる場所だったり
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おなじ御題でかきもの2つめ、投下いたします。
画像をちょっと変えて、御題は引き続きこちら。
gennoshouko4.jpg
・・・これも『現の証拠』です。
私の『縁のある地方』にも咲いておりますが、どちらかといえば白花が多かったです。
たまに紫を見ると「おお」と思ったので。

リクエストを頂いた際、花色にも着目されていらっしゃいましたvvv
・・・白いお花と紫のお花・・・。

・・・私に、『あの二人で書け』と仰るかのような!!
(違っていたらごめんなさい!!)

というわけで、現の証拠の2作目を続きよりupいたします。
どのキャラクターで書いたかは紹介する必要もないでしょう。。。

「捨てられて、拾われて」


それは確か・・・私が朽木の家に養子に来て間もないときのことだ。
兄様が体調を崩された。
清家殿をはじめ、家中の者が大わらわとなっていた。

「白哉様はどうやら悪い物を口になさったらしい。」
「あの白哉様が?」
「胃もたれと腹下しの両方を患われたらしい。戻されてもいるそうだ。」
「なんということでしょう。」

いったい何を口にされたのだろうか。
養子になって間もないとはいえ、常ならば下手な物を口になどされないはずの方であることくらい分かっていた。
それでも、あのころの私は何を思ったのであろうか・・・

自分だけまるで蚊帳の外に置かれてしまっていたものの、少しでも兄様のお役に立って、自分を見てもらいたかったのだろうか。
皆が自分になど気を留めないことを良い事に、朽木の家を抜けだしていた。

犬吊に居たころ、具合が悪くなっても薬なんて無かった。
だから、その辺に生えている薬草を覚えることはとても重要なことで。
とりわけ食糧事情が大変だったこともあり、腹下しを治す薬はすぐに覚えた。

「・・・これだ。」

私が見つけたのは、白い花を咲かせた小さな薬草だった。
恋次が教えてくれたのだ、この花は腹下しの薬になるのだ、と。
いくつか摘んだところで、すぐそばに薄紫の・・・けれども同じ形の花を見つけた。
「たしか、この薄紫の花も色違いで同じ薬草だと言っていたな。」
薬草はあるならあるだけ良い、そういう経験から・・・その紫色の花も摘んでいった。
・・・少しでも兄様のお体の具合が良くなるように、少しでも自分のことに関心を持ってもらえるように。
そんなささやかな願いも込めて。


屋敷に戻ると、相変わらず皆が忙しくしていた。
自分の部屋に向かう際に必ず兄様の部屋の前を通らねばならない間取りのため、お見舞いとして届けよう、などと思っていたのだ、あの時。
けれど・・・・

「白哉様、無理をしてあのようなものを食せずとも・・・・」
「・・・・」
「しかし、どうやら薬が効いてきたようですな。」

清家殿と兄様が、話しているのが聞こえてきた。
・・・嗚呼、既にお薬は飲まれていらっしゃったか。

よくよく考えれば当たり前のことで、この朽木の家にはお抱えの匙氏の一人や二人くらい居て当たり前なのだ。
そして良く効くお薬を献じられて当然なのだ。
・・・私が摘んできた、犬吊の得体も知れない薬草なんて・・・逆に危なくて口になどするはずがないのだ。

今考えれば、幼かったのだと思う、そして単純で・・・必死だったのだろう、と。
そう、あのころの私はきっと如何にかして兄様に認めて頂きたくて、必死だったのだ。
そんな私の精一杯も、朽木の家、というものの前では瑣末な事でしかないのだと・・・あの時思い知ったのだったな。

どれだけ自分が愚かなのだろうか、と・・・。

いつもなら、仮に兄様のお加減が悪くても、夜勤明けでお休みで無い限りはご挨拶をしてから自室に向かうのだが、
あの日は・・・さまざまな事で胸が一杯になって・・・何も言えずに通り過ぎた。
自分で布団も敷き、その中に潜って・・・ずっとうずくまることしかできなくて。
摘まれた花は、縁側から叩きつけるように捨ててしまった。
・・・嗚呼なんて自分は馬鹿なんだろうか、そう思いながら。

 

「あれ・・・これは・・・?」

先日兄様からお借りした、今現在も兄様が愛用されているという縛道の教本に、何かが挟まっていた。
それは、色あせた押し花で作られた、古ぼけたしおり。
色あせてはいるけれど、もともとの花びらは・・・白と、薄い青か紫色だったのだろうと想像できる程度に色は残っていた。

「現の証拠・・・何故?」

よく見れば、それは現の証拠の花。
確かに野に咲く愛らしい花ではあれど、押し花にするような類のものではない。
もっぱら薬草として用いられるものである。

「もしかして・・・いや、そんなはずは、」

遠い昔の、自分にとってはやるせないことこの上ない記憶が蘇る。
確かに、薬草の名前こそ知らなかったけれども、あの時摘んだのは『現の証拠』であった。
(そういう名の植物だと、後に知ったのだが。)
確か、あの時摘んだものは・・・縁側から庭に投げ捨てたはず。
普通に考えれば、そんなものが巡り巡ってしおりになどなっているわけが無い。
・・・淡い期待など簡単に持てるような子どもでは、もう無いのだ。あのときの私とは違う。

ただ・・・ずっと愛用されているような様子は見て取れたので、取りあえず兄様にしおりだけでもお返しすべきだろうと考えた。
ところどころ千切れそうになったり、しみになったりしているのだが・・・其れを補修された跡があったのだ。


兄様の部屋の前で、清家殿と鉢合わせになった。

「おや、どうされましたかな。」
「兄様に書物を借りましたところ、此れが挟まっておりましたので・・・大事にされていそうな感じでしたので、お返しにあがろうと思って。」

それを見た清家殿が一瞬驚きを見せたけれど、すぐに・・・懐かしむような、何処かいとおしむ様な表情になった。

「白哉様・・・うっかりされていらっしゃるというか、でもルキア様だったが故でしょうか・・・。」
「清家殿・・・?」

私が不思議そうな顔をしていたのを見て、清家殿は教えてくださった。

「此れは白哉様の宝物でございますな。」


清家殿が仰るには・・・
兄様だけでなく私まで具合が悪いようで、どうしたのだろうと思った侍女が様子を見に来たときに、縁側に捨てられていた現の証拠を見つけたらしい。
そして、泣きながら眠ってしまっていた、私の涙の跡の残る寝顔を見て(薬草を摘んだ際に手に付いた草の汁の跡も見て)、清家殿に報告したのだという。
「・・・ルキア様が薬草を摘んできていたらしい」と。
「今日の白哉様のご様子を知って・・・白哉様のために摘んで来られたのではないか」と。
しおれてしまっていたその花は、すぐさま床に就かれていた兄様の許に届けられたそうである。
ただ、既に薬は不要になっており・・・そもそも何処で採取されたものか分からぬものは使えない。

「あのときの白哉様は、お顔にこそ殆ど出されませんでしたが・・・それでも、少しさびしそうでございましたな。」
「え?」
「・・・何時もならばルキア様が必ずご挨拶に来てくださるのに其れもなく、
白哉様のためにお摘みになられたであろう花は捨てられ、
その花はルキア様の手からではなく、我々傍仕えの手から渡されて・・・。
ですが、その花を1輪、お手にとられたとき・・・ほんの僅かですが、眉根を下げられのを覚えております。
薬草としてでなくとも、お見舞いの花としてもしもルキア様から差し上げられていたら・・・。」
「でも、あのころの私にはそんな余裕は」
「・・・存じ上げております。
其れを理解されていたから、白哉様はさびしそうなご様子だったのでしょうね・・・。」

既に花はしおれ切り、水に挿しても手遅れな状況であったという。
それでも、義妹が自分のために摘んできた花の哀れな姿をどうにかしようと考えられていたそうで。
そこで清家殿が「押し花にでもいたしますか」と申し出たらしい。
そうすれば、色は褪せても傍にずっと置いておけましょう、と。
拾い集めたものをすべて押し花にし、その中でもとりわけ形が良かったものをしおりにしたものが、今私の手の中にある其れなのだという。

「決して其れだけは私どもにも触らせないのですよ。文机の上に置かれていても『触れるな』と仰る。」

まさか、あの犬吊の現の証拠がこんな形で残っているとは・・・。
何よりも、兄様が取っておいてくださったとは・・・。
抱くべきではないと思っていた淡い期待を、抱いても良かっただなんて。

・・・あのときの私が、少しだけ報われたような気がした。


「そういえば清家殿、あの時何故兄様はお体を悪くされていたのですか?
なにか悪い物を口にされた、と伺いましたが・・・。」
「ああ、あの時は・・・
食後にお出しした白玉ぜんざいが・・・ルキア様の健康を考えられて甘さ控えめになったことがございましたでしょう?」
「そういえば・・・一時期、かなり甘みが控えめになったことが。」
「味が変わったことにお気づきになられたルキア様の表情を気になされてましてね、白哉様は。」
「・・・?」
「ルキア様にお出しする白玉ぜんざいの甘みが足りぬのではないかと白哉様が仰って、
白玉ぜんざいくらいはルキア様の好みの味で出すように、何なら自ら味を見ると・・・甘いものが得意ではないのにぜんざいを食されて、胸焼けを起こされたのです。」
「はぁ?」
「ルキア様が白玉がお好きであるとお知りになった白哉様が、もっと甘くておいしいぜんざいを出せばルキア様が笑うのではないか、と・・・。
そんなルキア様が白玉ぜんざいに違和感を持たれたのですから、それはもう・・・・
あのときの白哉様にとっては、白玉ぜんざい一つが結構重要なものだったのですよ。
ぜんざいの甘み加減くらい、ルキア様に直接お聞きになれば良いのに・・・困ったお人ですから。」




拙宅の兄様は、しょうもないところで本気を出します。
でも最愛の義妹さんの前では何も表現できないヘタレさんです。
それゆえにすれ違っているのに・・・困ったものです。

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無題
その後お加減如何でしょうか、さー坊様!
下に纏めて感想を書こうと思ってましたが、長くなる!と思い、鬱陶しいのを承知で別々に書かせていただきました。すみません。
改めまして素敵なお話をありがとうございます!
本誌の兄様が辛くて白哉様熱が上がっているのでとても嬉しかったです!
素直に言葉をかけられない、『それっくらいはちゃんとルキアさんに伝えましょうよ!』ってくらい不器用過ぎる兄様にもだもださせられる話が私も大好きです! むしろ、それでこそ兄様! 
それでルキアさんが辛い思いをしてしまうのですが、誤解さえ解けてしまえば、むしろ兄様の深すぎる気持ちが伝わってまた想い合えるのがこの兄妹のよいところ♥ 素敵な兄妹話もありがとうございました!! 

あ、企画リクの件ですが、了解です! 月城クォリティですが、どちらか上手く描けた方を送付させていただきますねw 
月城はるか 2012/12/11(Tue)22:16:38 編集
Re:無題
こちらにもコメントを頂き、本当にありがとうございます。
体調は・・・波はあります、ね。。。
(腕がどうにも動かなかったり頭痛がでることもあれば、快調過ぎて「お前なぁ・・・」と呆れ返られることもあります。)

さて、花色に煽られて降って沸いた拙宅の白ルキ・・・というか朽木兄妹。
ヘタレ兄様に翻弄されるルキアさん、ある意味拙宅の典型的な「朽木兄妹の描かれ方」になりつつあるような気がしております。
(つまり、似たような話が多い、と思っているのです。)
本当はもうちょっと凛々しい兄様と、同じくらい凛々しいルキアさんで、格好良い朽木兄妹を描いてみたいのですよ、力量ないのは分かっておりますが。。。
「不器用すぎる兄様」を「むしろ、それでこそ兄様!」と仰ってくださっているのが拙宅では救いです、本当に。
2作ともお読みくださってありがとうございました!!

リクエストの件、いろいろとマニアックな注文をつけてしまって申し訳ありません。。。
納品時期が遅れるかもしれませんが・・・のんびりお待ち頂けると大変有難いです。
さー  【2012/12/16 23:20】
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多数?の草鞋履き(最近少し減らしました)
趣味:
読書、音楽弾き聴き、きもの、草いじり、料理、・・・あと、かきものとか。
自己紹介:
諸般の事情から「多数の草鞋」を履くことになってしまった私です。
息抜きとして、日々のことや趣味のことも書けたら良いなと思っています。

☆名前について☆
ここでは“さー”を使っていますが、“さー坊”というのも時折使っております。
(メール送信時は、名字まで付いてます。)
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