「多数のわらじ」を履いている?私の、ちょっとだけ息抜きさせてもらえる場所だったり
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今日は何の日でしょう?
・・・というわけで、かきもの、行きます。
御題はこちら。
栗です。
この時期になると近所のスーパーでもネットに入って売られていますが、私は祖父が山で拾ってきた栗が一番好きです。
(あるいみ贅沢!!)
そんなに大きくもないし甘みも少ないけれど、無駄に甘みがない分素朴で好きなんです。
というか、一度(甘露煮とか栗きんとんとかモンブランとかに)加工されてしまうと、急に食べられなくなるという変わった性質を持っております。
(でもサツマイモは色々と手を加えても普通に美味しく頂けます。)
つまり栗は『茹でたまま・焼いたまま』というのが私のジャスティスなのです。
というわけで、続きよりかきものを。
今回は・・・意外な?方が出てきます。
・・・というわけで、かきもの、行きます。
御題はこちら。
栗です。
この時期になると近所のスーパーでもネットに入って売られていますが、私は祖父が山で拾ってきた栗が一番好きです。
(あるいみ贅沢!!)
そんなに大きくもないし甘みも少ないけれど、無駄に甘みがない分素朴で好きなんです。
というか、一度(甘露煮とか栗きんとんとかモンブランとかに)加工されてしまうと、急に食べられなくなるという変わった性質を持っております。
(でもサツマイモは色々と手を加えても普通に美味しく頂けます。)
つまり栗は『茹でたまま・焼いたまま』というのが私のジャスティスなのです。
というわけで、続きよりかきものを。
今回は・・・意外な?方が出てきます。
なんだかんだといっても、此の方も腐心されてきたんだろうな・・・とは思います。
それを分かっているからこそ、何かしたかった、という感じですね・・・。
でも機会が無いから、現世で祝日とされている『今日』を狙ったのですよ。
『はじめての贈り物』
「・・・たしかこの辺だよな。」
「ああ、そうだ。この地図によるとこの辺りに・・・。」
「しっかしよぉ、急に栗拾いをするなんて何事かと思ったぜ。」
「悪いな、恋次。」
「・・・お前らしいといえば、らしいけれどな。」
-恋次、栗拾いに付き合え。
-は?栗??
-理由は後で幾らでも話す。
-まぁ、暇だから良いけどよ・・・。
「あ、これじゃねえの?」
「おお、これだろうな。」
「じゃ、拾うとするか。」
「毬(いが)に気をつけろよ恋次。ハサミで気をつけて取るのだぞ。
あと足元にもだな」
「痛ってぇ!!」
「最後まで人のいう事を聞け。踏まぬように気をつけろ。」
「現世の すにーかー がありゃこんな毬なんざ踏みつけて楽に出来るのによ・・・。」
「これは虫食いだな。」
「犬吊にいた頃はこんなモンでもご馳走だったよな。」
「ああ。」
「でも、今回は使えねーな。」
「致し方あるまい。自然のものだからな。」
「まぁそれでもよ、何個かはどう頑張っても虫食いがあるかもしれねーな。」
「それはそれで仕方あるまい。虫食いが混じっていてもきちんと処理できる方法があるらしいからな・・・出来るだけ虫食いを取り除くに越したことは無いが。」
「で、これはしばらく放っておくんだろ?虫が湧かないように処理して。」
「ああ。・・・それに甘藷と同じで、寝かせるとより甘くなるそうだ。」
「・・・間に合うのか?」
「このあたりのは早生の栗らしい。
計画実行から逆算して、このあたりの栗であれば、今収穫すれば間に合うと言っていた。」
「そっか。」
「喜んでくださるかどうか・・・。」
「大丈夫だろうよ。」
「何故そう思うのだ恋次。」
「・・・何だかんだいってもよ、お前のこと無碍にはしなかっただろ?あの人も。
そりゃまぁ、色々とあったかもしれねーけど・・・。」
「そうだな。」
「もう、秋の空なんだな。」
「そうだな。」
「さて、帰るとするか。」
「ああ・・・今日はありがとう。」
「別に構わねぇよ。そういうの嫌いじゃねぇし。」
「おかえりなさいませルキア様。」
「色々とすみません。」
「栗は沢山拾えましたか?」
「ええ、此れくらいなのですが。」
「これだけあれば十分でございます。
では虫が湧かないように処理だけしてしまいますので、お預かりして宜しいですか?
勿論、実際にお使いになられるときはルキア様とご一緒いたしますので。」
「お願いできますか?何も知らない私よりもお任せした方がよいと思いますので。」
(3週間後・・・くらい経過)
「ではルキア様、始めましょうか。」
「お願いいたします。
何を先ず始めれば良いでしょうか?」
「栗の皮むきから始まるのですが・・・大変申し上げにくいのですが、この和栗は大変渋皮が向きにくいものございます。
ルキア様がお怪我をされては大変ですので、もしも差し支えなければ」
「いえ、私にも剥かせてください。」
「ですが・・・・」
「手を切るくらいならば、鬼道で私も自分のことくらいは治療できますから。」
「お気持ちは分かりますが、そういう問題ではなくてですね」
「・・・なんとか、自分でやってみたいんです。」
「・・・分かりました、では一緒に最初からやりましょう。
ただ、本当にお気をつけてくださいね?」
「はい。」
「昨日の夜から水に漬けておいたのです。こうすると外の固い皮が剥きやすくなるのです。
まずはこの皮を包丁で切れ込みを入れて取り除いていきます。」
「包丁で切れ込みを入れた後、手で取り除いても大丈夫ですか?」
「ええ、問題は御座いませんが・・・手を傷めぬよう気をつけてくださいね。
もっとも、全て包丁で取り除くよりは刃物で怪我をする危険は減るかと思います。
それと・・・申し上げにくいのですが、皆で手分けをしても宜しいですか?
少々お時間がかかる可能性がございます故。」
「すみません・・・。」
「ですが、2品作るうちの・・・今回本当にルキア様のお手で作られることが重要な意味をもつ方は、出来るだけルキア様が下処理をされたものを使いましょう。」
「慣れてきたものの・・・結構大変ですね。」
「ええ。ですが本当に大変なのは此処からなのです。
固い表皮は数が多いので剥くのが大変ですが、それでもコロリと皮は取れるのです。
ですが・・・・」
「?」
「渋皮を剥くのが、この種類の栗は大変なのですよ。
生の栗は甘藷よりも固いですし、包丁で厚く剥かなくてはなりませんから・・・本当はルキア様にお怪我をさせてはなりませぬから、あまりお勧めできない作業なのです。」
「・・・・」
「ですが、ルキア様・・・・」
「出来る限り、やってみたいのです。」
「そう仰ると思いました。もう分かっておりますよ。私たちもお止めすることはしませぬから。」
「え・・・・」
「小さめの栗は私たちが処理いたしますから、大きめの剥きやすそうなものを是非に。」
「・・・痛っ」
「大丈夫ですかルキア様!!」
「ええ・・・軽く切っただけです。後で鬼道で治せば大丈夫。」
「もう少し厚く、少しずつ剥けば大丈夫ですから。」
「すみません。」
「軽く止血だけしましょうか。
剥き終わったものは少し水に漬けて灰汁を抜きましょう。」
「これで足りるでしょうか?」
「十分ですよ、ルキア様。
沢山剥いてくださったので、恐らく余るかもしれません。
少しだけ此方の私たちが剥いたものに混ぜても宜しいですか?」
「お願いいたします。」
「ではこちらの栗は私たちのに混ぜて・・・此方の大きな栗は甘露煮にしますね。」
「・・・甘露煮の段階で美味しそうだ。」
「でも食べては駄目ですよ、ルキア様。」
「我慢我慢・・・・」
「その間に、他の材料の下ごしらえをしましょうね。
材料は普段よりお食事に用いているものばかりですので、奇抜なものは何も御座いません。」
「あとどれ位時間がかかるのでしょうか。」
「下ごしらえさえしてしまえば、後もう少しですよ。」
「喜んでいただけるといいのだが・・・。」
「大丈夫です、きっとお喜びになられますよ。」
「おや?・・・今日はとても厨が賑やかですな。」
「清家殿、」
「ルキア様、如何なされましたかな?」
「あの、今お時間は宜しいでしょうか・・・?」
「ええ、宜しゅう御座います。」
いつにも増してよそよそしいルキア様。
もっとも、今も私にはあまり心を開かれてはいらっしゃらないのですが・・・
私も白哉様付きの従者で御座いますから、致し方ないといえばそうなのですが。
「あの、此れを・・・。」
「此れは?」
「・・・栗羊羹です。」
「栗羊羹、で御座いますか?さてどちらのお店の」
「あの、これは私が厨の皆様と一緒に、その・・・お手伝い頂いて・・・もしも宜しければ、」
ホ、それで今日は厨がとても賑やかだったのですね。
ルキア様も皆もとても和やかだったものですから、何をしていらっしゃるのかと思ったものです。
しかし、白哉様は甘いものをあまりお召しになられないことを既にご存知なはず。
栗羊羹をお作りになるなど、なにか事情がお有りなのでしょうか。
「では早速、白哉様がお帰りになられましたらお出し致しましょうか。
ルキア様のお造りになられたものでしたら、きっと白哉様も」
「いえ、違うんです。」
「違う・・・とは?」
「その羊羹は、兄様にではなくて・・・その・・・・」
「まさか、私に、で御座いますか?」
「・・・はい。」
何故、私になど・・・・
「現世では、この時期に・・・その、目上の方に感謝をする日があるそうで。
ですので、いつもお世話になっていて・・・感謝してばかりで、何もお返し出来ていないものですから、何か出来ないかなと思って・・・。
本当は清家殿のお誕生日を知っていたら良かったのですが、申し訳ありません、生憎存じ上げなくて。」
「それで、今日は厨で・・・・」
「はい。もっとも私は・・・本当のところは足手まといにしかならなくて、迷惑ばかり掛けていたのですが。
その栗羊羹も、栗の皮むきは下手だし、いびつだし・・・子どものままごとで作るものよりも酷いものですが、でも味は端っこを皆で味見したので、大丈夫だと思います。」
「・・・・」
「あ、夕食には栗ご飯が出るのですが、それは殆どが皆様に作っていただいたものですから、とっても美味しそうに出来上がるはずです!!
・・・少しだけ、私のいびつな栗が入っているかもしれませんが。」
私への、贈物・・・・
以前も、ございましたね・・・・
-清家、お前の絵を描いたぞ!!上手に描けただろう??
そう、あれはまだずっと幼い白哉様が習字の際に描かれたもの。
顔に墨をべったりと付けられたまま、早く私に見せたいと仰られんばかりでございまいた。
確かあの日は私の誕生日で御座いましたね。
-・・・清家?
-とってもお上手で御座いますよ?白哉様。
-どうしたのだ清家、お前ならもっと笑ってくれると思ったのに。何故泣く?
あの時、私は不覚にも目を潤ませてしまったものです。
白哉様が心配そうに私を覗き込むものですから、軽く目を拭って、私のことなど気にされぬようにと・・・稽古に戻られるように促したものです。
-さ、白哉様。まだ稽古は途中で御座いましょう?お戻り下さいませ。
-じゃあ、此れは清家、お前にやる!!誕生日の祝いだ。
-有り難く頂戴いたしましょう。
あの似顔絵は、今も私の手文庫の中に大切にしまっております。
-清家、いつも感謝しているぞ。これからもずっと元気で長生きするのだぞ!!
-はい。爺はずっと長生きして、白哉様のお傍におりますよ。
部屋に戻られる際に此方を振り返りながら、よく通るお声で私にそう仰いました。
あの頃の白哉様はとても活発なお子様でしてね。
障子が閉まった後、私の手の中に残された・・・眼鏡の有無以外は銀嶺様の似顔絵と殆ど変わらぬ私の似顔絵を見つめながら、込み上げるものを必死に押さえたものでございます。
あれから月日は流れているものの、たかが百年程度・・・
年を取ると涙もろくなるとは言いますが、私も、たった百年程度ですのに、
更に涙もろくなったのでしょうか。
「あ、あの・・・清家殿?どうされました?」
「いえ、ふと昔のことを思い出しましてね。」
「昔のこと、ですか?何かお辛いことがあったのでしょうか・・・・」
心配されるには及びませぬ。
どうか涙もろくなった年寄りのことなど、御気になさりませぬよう・・・・
「ルキア様、手を怪我されたと連絡が御座いましたが、手当てはされたのでしょうか。」
「あ、はい。鬼道で治せる程度の些細なものでしたから。」
「左様ですか。他に怪我は御座いませんか?」
「大丈夫です。ご心配をお掛けしてすみません。
でも勤務ではもっと色々と怪我をしてきますから・・・単にそそっかしいだけなのですが。」
先程までのよそよそしさをルキア様に強いていたのは、私のほうだったのでしょうね。
ルキア様はちゃんと、私のことをお考えになられていたのに。
今、私の目の前にいらっしゃるルキア様は、先程私を呼びとめたときのご様子とは明らかに違っていて、少しですが打ち解けてくださっていて・・・・
-清家、似顔絵が嫌だったら捨てていいぞ。また上手に描いてやるからな。
-何を仰いますか白哉様。爺にはその様なことが出来るはず御座いませぬ。
白哉様に爺の似顔絵を描いて頂き、爺は大変嬉しゅう御座いますよ。
「あの、もしも御口に合わないようでしたら・・・そのまま捨てて頂いても構いませんので・・・・」
「何を仰りますかルキア様。その様なことが私に出来るわけが御座いませぬ。
私のために斯様な贈物を賜り・・・・」
「せ、清家殿・・・・」
・・・爺は、大変嬉しゅう御座いますぞ、ルキア様。
「白哉様、此方はルキア様がお手伝いをされたという栗おこわでございます。」
「何故ルキアが?」
「山で沢山の栗を拾ってこられたとの事、それを料理に用いたと」
「私が聞いているのはそのことではない、何故ルキアが手伝ったのかということだ。」
「それは、ルキア様が手ずから料理を作る必要があったからで御座いましょう。」
「清家、お前は何かを知っているのだな。」
「ホ、何を仰りますか白哉様。」
「どうやらその理由というのは、私のみ知らぬようだな。厨の者どもはルキアと共に此れを作ったというのであれば。
理由も知らずに厨の者どもがルキアに炊事などさせるわけがあるまい。」
「栗羊羹をお作りになったのですよ、ルキア様は。栗おこわは残りの栗を使ったものですよ。
その栗おこわの一部にも、ルキア様の剥かれた栗が入っているとのことですが、その椀に入っているかどうかまでは分かりませぬ。」
「栗羊羹だと?」
「はい。」
「して、その栗羊羹は何処にあるのだ?後ほど食後に出すつもりであれば先に」
「いえ、白哉様にお出しする予定は御座いませぬ。」
「何だと?」
-本当に美味しゅうございますね、ルキア様。
-あの、私まで頂いて良いのでしょうか・・・?
-ええ、ご一緒に召し上がって下さって有り難いのですよ。
-お茶まで淹れて頂いて・・・栗羊羹を差し上げた趣旨からすれば、
今日はお茶も清家殿に私が淹れて差し上げるべきなのに。
-お茶くらいは私に淹れさせて下さいな。斯様な爺でも、
お茶くらいは淹れられますぞ。
「では既に羊羹は貴様とルキアの胃の中、ということか。」
「はい。ですが・・・仮に残っていたとしても、白哉様ならば、たとえルキア様お手製のものであったとしても、目下である私からの裾分けなど受けますまい。
ですから、二人で美味しく頂きました。」
「貴様・・・・」
栗羊羹の包み紙と・・・ルキア様から栗羊羹に添えられた一筆箋ならば、
手文庫に・・・あの白哉様の似顔絵と共にしまってあるのですが。
「よぅ、ルキア・・・計画していた栗羊羹は喜んでもらえたのか?」
「ああ、しかも二人で美味しく頂いた。色々な話も聞けて有意義なひと時を過ごすことが出来た。
で、此れは裾分けだ・・・あの栗の残りで作った栗ご飯だ。」
「へぇ、ちゃんと栗の皮を剥けてるじゃねーの。」
「・・・其れは屋敷の者が剥いたやつだ。こっちが私の剥いたもの。」
「・・・うわ、へったくそ!!!!」
「このたわけ者がっ!!」
「貴様には でりかしー というものが無いのか???」
「いや悪ぃ・・・。」
「でも味は保証するぞ。何せ兄様が三杯もお替りをしたらしいからな。」
「朽木隊長って、そんなに栗好きだったっけ・・・。」
それを分かっているからこそ、何かしたかった、という感じですね・・・。
でも機会が無いから、現世で祝日とされている『今日』を狙ったのですよ。
『はじめての贈り物』
「・・・たしかこの辺だよな。」
「ああ、そうだ。この地図によるとこの辺りに・・・。」
「しっかしよぉ、急に栗拾いをするなんて何事かと思ったぜ。」
「悪いな、恋次。」
「・・・お前らしいといえば、らしいけれどな。」
-恋次、栗拾いに付き合え。
-は?栗??
-理由は後で幾らでも話す。
-まぁ、暇だから良いけどよ・・・。
「あ、これじゃねえの?」
「おお、これだろうな。」
「じゃ、拾うとするか。」
「毬(いが)に気をつけろよ恋次。ハサミで気をつけて取るのだぞ。
あと足元にもだな」
「痛ってぇ!!」
「最後まで人のいう事を聞け。踏まぬように気をつけろ。」
「現世の すにーかー がありゃこんな毬なんざ踏みつけて楽に出来るのによ・・・。」
「これは虫食いだな。」
「犬吊にいた頃はこんなモンでもご馳走だったよな。」
「ああ。」
「でも、今回は使えねーな。」
「致し方あるまい。自然のものだからな。」
「まぁそれでもよ、何個かはどう頑張っても虫食いがあるかもしれねーな。」
「それはそれで仕方あるまい。虫食いが混じっていてもきちんと処理できる方法があるらしいからな・・・出来るだけ虫食いを取り除くに越したことは無いが。」
「で、これはしばらく放っておくんだろ?虫が湧かないように処理して。」
「ああ。・・・それに甘藷と同じで、寝かせるとより甘くなるそうだ。」
「・・・間に合うのか?」
「このあたりのは早生の栗らしい。
計画実行から逆算して、このあたりの栗であれば、今収穫すれば間に合うと言っていた。」
「そっか。」
「喜んでくださるかどうか・・・。」
「大丈夫だろうよ。」
「何故そう思うのだ恋次。」
「・・・何だかんだいってもよ、お前のこと無碍にはしなかっただろ?あの人も。
そりゃまぁ、色々とあったかもしれねーけど・・・。」
「そうだな。」
「もう、秋の空なんだな。」
「そうだな。」
「さて、帰るとするか。」
「ああ・・・今日はありがとう。」
「別に構わねぇよ。そういうの嫌いじゃねぇし。」
「おかえりなさいませルキア様。」
「色々とすみません。」
「栗は沢山拾えましたか?」
「ええ、此れくらいなのですが。」
「これだけあれば十分でございます。
では虫が湧かないように処理だけしてしまいますので、お預かりして宜しいですか?
勿論、実際にお使いになられるときはルキア様とご一緒いたしますので。」
「お願いできますか?何も知らない私よりもお任せした方がよいと思いますので。」
(3週間後・・・くらい経過)
「ではルキア様、始めましょうか。」
「お願いいたします。
何を先ず始めれば良いでしょうか?」
「栗の皮むきから始まるのですが・・・大変申し上げにくいのですが、この和栗は大変渋皮が向きにくいものございます。
ルキア様がお怪我をされては大変ですので、もしも差し支えなければ」
「いえ、私にも剥かせてください。」
「ですが・・・・」
「手を切るくらいならば、鬼道で私も自分のことくらいは治療できますから。」
「お気持ちは分かりますが、そういう問題ではなくてですね」
「・・・なんとか、自分でやってみたいんです。」
「・・・分かりました、では一緒に最初からやりましょう。
ただ、本当にお気をつけてくださいね?」
「はい。」
「昨日の夜から水に漬けておいたのです。こうすると外の固い皮が剥きやすくなるのです。
まずはこの皮を包丁で切れ込みを入れて取り除いていきます。」
「包丁で切れ込みを入れた後、手で取り除いても大丈夫ですか?」
「ええ、問題は御座いませんが・・・手を傷めぬよう気をつけてくださいね。
もっとも、全て包丁で取り除くよりは刃物で怪我をする危険は減るかと思います。
それと・・・申し上げにくいのですが、皆で手分けをしても宜しいですか?
少々お時間がかかる可能性がございます故。」
「すみません・・・。」
「ですが、2品作るうちの・・・今回本当にルキア様のお手で作られることが重要な意味をもつ方は、出来るだけルキア様が下処理をされたものを使いましょう。」
「慣れてきたものの・・・結構大変ですね。」
「ええ。ですが本当に大変なのは此処からなのです。
固い表皮は数が多いので剥くのが大変ですが、それでもコロリと皮は取れるのです。
ですが・・・・」
「?」
「渋皮を剥くのが、この種類の栗は大変なのですよ。
生の栗は甘藷よりも固いですし、包丁で厚く剥かなくてはなりませんから・・・本当はルキア様にお怪我をさせてはなりませぬから、あまりお勧めできない作業なのです。」
「・・・・」
「ですが、ルキア様・・・・」
「出来る限り、やってみたいのです。」
「そう仰ると思いました。もう分かっておりますよ。私たちもお止めすることはしませぬから。」
「え・・・・」
「小さめの栗は私たちが処理いたしますから、大きめの剥きやすそうなものを是非に。」
「・・・痛っ」
「大丈夫ですかルキア様!!」
「ええ・・・軽く切っただけです。後で鬼道で治せば大丈夫。」
「もう少し厚く、少しずつ剥けば大丈夫ですから。」
「すみません。」
「軽く止血だけしましょうか。
剥き終わったものは少し水に漬けて灰汁を抜きましょう。」
「これで足りるでしょうか?」
「十分ですよ、ルキア様。
沢山剥いてくださったので、恐らく余るかもしれません。
少しだけ此方の私たちが剥いたものに混ぜても宜しいですか?」
「お願いいたします。」
「ではこちらの栗は私たちのに混ぜて・・・此方の大きな栗は甘露煮にしますね。」
「・・・甘露煮の段階で美味しそうだ。」
「でも食べては駄目ですよ、ルキア様。」
「我慢我慢・・・・」
「その間に、他の材料の下ごしらえをしましょうね。
材料は普段よりお食事に用いているものばかりですので、奇抜なものは何も御座いません。」
「あとどれ位時間がかかるのでしょうか。」
「下ごしらえさえしてしまえば、後もう少しですよ。」
「喜んでいただけるといいのだが・・・。」
「大丈夫です、きっとお喜びになられますよ。」
「おや?・・・今日はとても厨が賑やかですな。」
「清家殿、」
「ルキア様、如何なされましたかな?」
「あの、今お時間は宜しいでしょうか・・・?」
「ええ、宜しゅう御座います。」
いつにも増してよそよそしいルキア様。
もっとも、今も私にはあまり心を開かれてはいらっしゃらないのですが・・・
私も白哉様付きの従者で御座いますから、致し方ないといえばそうなのですが。
「あの、此れを・・・。」
「此れは?」
「・・・栗羊羹です。」
「栗羊羹、で御座いますか?さてどちらのお店の」
「あの、これは私が厨の皆様と一緒に、その・・・お手伝い頂いて・・・もしも宜しければ、」
ホ、それで今日は厨がとても賑やかだったのですね。
ルキア様も皆もとても和やかだったものですから、何をしていらっしゃるのかと思ったものです。
しかし、白哉様は甘いものをあまりお召しになられないことを既にご存知なはず。
栗羊羹をお作りになるなど、なにか事情がお有りなのでしょうか。
「では早速、白哉様がお帰りになられましたらお出し致しましょうか。
ルキア様のお造りになられたものでしたら、きっと白哉様も」
「いえ、違うんです。」
「違う・・・とは?」
「その羊羹は、兄様にではなくて・・・その・・・・」
「まさか、私に、で御座いますか?」
「・・・はい。」
何故、私になど・・・・
「現世では、この時期に・・・その、目上の方に感謝をする日があるそうで。
ですので、いつもお世話になっていて・・・感謝してばかりで、何もお返し出来ていないものですから、何か出来ないかなと思って・・・。
本当は清家殿のお誕生日を知っていたら良かったのですが、申し訳ありません、生憎存じ上げなくて。」
「それで、今日は厨で・・・・」
「はい。もっとも私は・・・本当のところは足手まといにしかならなくて、迷惑ばかり掛けていたのですが。
その栗羊羹も、栗の皮むきは下手だし、いびつだし・・・子どものままごとで作るものよりも酷いものですが、でも味は端っこを皆で味見したので、大丈夫だと思います。」
「・・・・」
「あ、夕食には栗ご飯が出るのですが、それは殆どが皆様に作っていただいたものですから、とっても美味しそうに出来上がるはずです!!
・・・少しだけ、私のいびつな栗が入っているかもしれませんが。」
私への、贈物・・・・
以前も、ございましたね・・・・
-清家、お前の絵を描いたぞ!!上手に描けただろう??
そう、あれはまだずっと幼い白哉様が習字の際に描かれたもの。
顔に墨をべったりと付けられたまま、早く私に見せたいと仰られんばかりでございまいた。
確かあの日は私の誕生日で御座いましたね。
-・・・清家?
-とってもお上手で御座いますよ?白哉様。
-どうしたのだ清家、お前ならもっと笑ってくれると思ったのに。何故泣く?
あの時、私は不覚にも目を潤ませてしまったものです。
白哉様が心配そうに私を覗き込むものですから、軽く目を拭って、私のことなど気にされぬようにと・・・稽古に戻られるように促したものです。
-さ、白哉様。まだ稽古は途中で御座いましょう?お戻り下さいませ。
-じゃあ、此れは清家、お前にやる!!誕生日の祝いだ。
-有り難く頂戴いたしましょう。
あの似顔絵は、今も私の手文庫の中に大切にしまっております。
-清家、いつも感謝しているぞ。これからもずっと元気で長生きするのだぞ!!
-はい。爺はずっと長生きして、白哉様のお傍におりますよ。
部屋に戻られる際に此方を振り返りながら、よく通るお声で私にそう仰いました。
あの頃の白哉様はとても活発なお子様でしてね。
障子が閉まった後、私の手の中に残された・・・眼鏡の有無以外は銀嶺様の似顔絵と殆ど変わらぬ私の似顔絵を見つめながら、込み上げるものを必死に押さえたものでございます。
あれから月日は流れているものの、たかが百年程度・・・
年を取ると涙もろくなるとは言いますが、私も、たった百年程度ですのに、
更に涙もろくなったのでしょうか。
「あ、あの・・・清家殿?どうされました?」
「いえ、ふと昔のことを思い出しましてね。」
「昔のこと、ですか?何かお辛いことがあったのでしょうか・・・・」
心配されるには及びませぬ。
どうか涙もろくなった年寄りのことなど、御気になさりませぬよう・・・・
「ルキア様、手を怪我されたと連絡が御座いましたが、手当てはされたのでしょうか。」
「あ、はい。鬼道で治せる程度の些細なものでしたから。」
「左様ですか。他に怪我は御座いませんか?」
「大丈夫です。ご心配をお掛けしてすみません。
でも勤務ではもっと色々と怪我をしてきますから・・・単にそそっかしいだけなのですが。」
先程までのよそよそしさをルキア様に強いていたのは、私のほうだったのでしょうね。
ルキア様はちゃんと、私のことをお考えになられていたのに。
今、私の目の前にいらっしゃるルキア様は、先程私を呼びとめたときのご様子とは明らかに違っていて、少しですが打ち解けてくださっていて・・・・
-清家、似顔絵が嫌だったら捨てていいぞ。また上手に描いてやるからな。
-何を仰いますか白哉様。爺にはその様なことが出来るはず御座いませぬ。
白哉様に爺の似顔絵を描いて頂き、爺は大変嬉しゅう御座いますよ。
「あの、もしも御口に合わないようでしたら・・・そのまま捨てて頂いても構いませんので・・・・」
「何を仰りますかルキア様。その様なことが私に出来るわけが御座いませぬ。
私のために斯様な贈物を賜り・・・・」
「せ、清家殿・・・・」
・・・爺は、大変嬉しゅう御座いますぞ、ルキア様。
「白哉様、此方はルキア様がお手伝いをされたという栗おこわでございます。」
「何故ルキアが?」
「山で沢山の栗を拾ってこられたとの事、それを料理に用いたと」
「私が聞いているのはそのことではない、何故ルキアが手伝ったのかということだ。」
「それは、ルキア様が手ずから料理を作る必要があったからで御座いましょう。」
「清家、お前は何かを知っているのだな。」
「ホ、何を仰りますか白哉様。」
「どうやらその理由というのは、私のみ知らぬようだな。厨の者どもはルキアと共に此れを作ったというのであれば。
理由も知らずに厨の者どもがルキアに炊事などさせるわけがあるまい。」
「栗羊羹をお作りになったのですよ、ルキア様は。栗おこわは残りの栗を使ったものですよ。
その栗おこわの一部にも、ルキア様の剥かれた栗が入っているとのことですが、その椀に入っているかどうかまでは分かりませぬ。」
「栗羊羹だと?」
「はい。」
「して、その栗羊羹は何処にあるのだ?後ほど食後に出すつもりであれば先に」
「いえ、白哉様にお出しする予定は御座いませぬ。」
「何だと?」
-本当に美味しゅうございますね、ルキア様。
-あの、私まで頂いて良いのでしょうか・・・?
-ええ、ご一緒に召し上がって下さって有り難いのですよ。
-お茶まで淹れて頂いて・・・栗羊羹を差し上げた趣旨からすれば、
今日はお茶も清家殿に私が淹れて差し上げるべきなのに。
-お茶くらいは私に淹れさせて下さいな。斯様な爺でも、
お茶くらいは淹れられますぞ。
「では既に羊羹は貴様とルキアの胃の中、ということか。」
「はい。ですが・・・仮に残っていたとしても、白哉様ならば、たとえルキア様お手製のものであったとしても、目下である私からの裾分けなど受けますまい。
ですから、二人で美味しく頂きました。」
「貴様・・・・」
栗羊羹の包み紙と・・・ルキア様から栗羊羹に添えられた一筆箋ならば、
手文庫に・・・あの白哉様の似顔絵と共にしまってあるのですが。
「よぅ、ルキア・・・計画していた栗羊羹は喜んでもらえたのか?」
「ああ、しかも二人で美味しく頂いた。色々な話も聞けて有意義なひと時を過ごすことが出来た。
で、此れは裾分けだ・・・あの栗の残りで作った栗ご飯だ。」
「へぇ、ちゃんと栗の皮を剥けてるじゃねーの。」
「・・・其れは屋敷の者が剥いたやつだ。こっちが私の剥いたもの。」
「・・・うわ、へったくそ!!!!」
「このたわけ者がっ!!」
「貴様には でりかしー というものが無いのか???」
「いや悪ぃ・・・。」
「でも味は保証するぞ。何せ兄様が三杯もお替りをしたらしいからな。」
「朽木隊長って、そんなに栗好きだったっけ・・・。」
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花個紋時計
プロフィール
HN:
さー
性別:
女性
職業:
多数?の草鞋履き(最近少し減らしました)
趣味:
読書、音楽弾き聴き、きもの、草いじり、料理、・・・あと、かきものとか。
自己紹介:
諸般の事情から「多数の草鞋」を履くことになってしまった私です。
息抜きとして、日々のことや趣味のことも書けたら良いなと思っています。
☆名前について☆
ここでは“さー”を使っていますが、“さー坊”というのも時折使っております。
(メール送信時は、名字まで付いてます。)
どれでもお好きなものでお呼び下さいませ♪
息抜きとして、日々のことや趣味のことも書けたら良いなと思っています。
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