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「多数のわらじ」を履いている?私の、ちょっとだけ息抜きさせてもらえる場所だったり
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・・・1月はルキアや山じい様、そしてアノ方の御誕生日も御座います。
そう、兄様です。

というわけで、祝っている内容ではないのですが、かきものを一つ。
御題は、此方。
natume3.jpg

ナツメです。漢字表記は『棗』。
乾燥させたものはお菓子の原料になったり漢方薬や薬膳料理に使われたりするのですが、実は生でも食べられるんです。
梨ににた感じの味、だとのことです。


今回は、この棗の花言葉やらなにやら色々と・・・ごちゃごちゃと長く書きつくろっています。
拙宅の『妹さんの御誕生日』はいつも『前向きな決意表明』チックになるのですが、それとは違い兄様は何故いつもこう・・・後ろ向きというか、回顧的というか・・・そういう雰囲気になってしまうのでしょうか?
あくまでも、御誕生日なのに。。。

そして、昨年の短すぎたお誕生日の反動か、異様に今年は長いです。

兄様はジンクスを信じなさそうな印象が個人的にはあります。
(というか、ジンクスがあってもそれを斬り捨てて行きそうな感じが。)
なのに、表情や態度には出さなくても、それを心のどこかでは恐れている・・・というところがあったら人間として面白い方だろうなぁ、と(いや、死神ですけれどね兄様は・・・)。

昨年の兄様御誕生日がとても短かったので、今回は長いです、半端なく。
それでは、どうぞ。


『彼方の記憶と、甘い迷信』


我が屋敷の庭の隅に、棗の古木がある。
其れは、私が物心付くときには、既にあった。
祖父が、体の弱かった父のために植えたものだという。

元々は、薬として用いるためだったそうだ。


父に手を引かれ、その棗の木の下に行った時のこと。
父がおもむろに手を伸ばし、まだ青い実を二つ取ると、片方を私に手渡ししてくれた。
不思議そうな顔をして見上げていただろう私の横で、手の中に残っていた実をそっと父は齧った。
実は青いが、美味しいぞ・・・そういって穏やかに笑った父の顔を見て、私も口にしたのだった。

干したものとは違う、梨の様な味。
此れがいつも父が口にしている薬になるなど、想像も出来なかった。

ただ、その時何よりも思ったのが、
・・・父と、このように穏やかな時をずっと過ごせたならば、ということだった。

常に朽木の者として、また一人の死神として誇り高かった父。
一方で、穏やかで優しく、私には無い温かさといったものを持っていた父。

必ず強く立派な死神になり、父を助け、父と共に朽木の者として規範足りうる存在になりたかった。

その思いは、遂に叶わなかったのだが。

************

父亡き後、私は棗のことなどすっかり忘れていた。
父の分も、次期当主たるに相応しくありたい、その思いから自己を鍛錬することしか頭に無かったのだ。
だが、その邪魔をするのがあの化け猫だった。

その日も、奴は何の前触れも無くやってきた。
私はそのような奴の挑発に乗るまいと、無視を決め込み鍛錬のために木刀の素振りをしていた。

『・・・棗か。懐かしいのぅ。』

思わず、その声に手を止めてしまった。
奴はニィ、と笑うと・・・実を一つもぎ取った。

「貴様何をする!!その木は」
「・・・生でも食えると教わったのは、何時の頃じゃったか。」

「丁度・・・白哉坊くらいの頃じゃったな。ワシはもっと幼くて・・・。
そうじゃった、今のように二人で木の下に居ったときのことじゃ。」

ホレ、食うてみぃ、と言われ、青い棗の実を差し出された。
おずおずと手を伸ばし、奴の手から実を摘み取る。

青い棗の味は、あの時と変わらない。
変わりつつあるのは、甘いものが苦手になりつつあったという己の味覚だけ、そう思っていた。

私に何の遠慮も無く横槍を入れてきたのは奴だけであった。
してその横槍の中に、いずれ私の力になるだろう術(すべ)を織り込んできたのも奴だけであった。

煙たい存在ではあると思いつつも、奴の為すことの意味は理解していたつもりだった。

そう、あの逃亡のときまでは。

**********

 『白哉様、棗の木に青い実がこんなに沢山。』

緋真が庭の棗の木の下で、此方を振り返りながら笑っていた。
結婚して4年目のことだったと思う。
既に体の具合が優れない状態であった。

「この実は赤くなったら収穫させよう。薬として用いる。」
「薬?」
「昔から、棗は薬草の一つとして用いてきたのだ。」
「あら・・・そうなのですか?」

真は、流魂街では青い実のまま齧ることもあったのですよ、と言って木を見上げていた。
そして、顔を曇らせた。
・・・恐らくは、猶も探し続ける妹のことを思ったのだろう。

「案ずるな緋真、必ずお前の妹は見つかろう。」
「・・・ええ・・・。」
「だから緋真、あまり無理はせずに」

「白哉様、青い棗の実、食べてみませんか?」

緋真の身を案ずる私をよそに、子どものように無邪気に笑いながら、唐突に緋真はそう言った。

「何をいきなり。」
「白哉様はきっと召し上がったことなど無いでしょう?」
「いや、あるが・・・。」

そんな私の声が聞こえていないようで、彼女はその実に手を伸ばしていた。
そして、二つ、その手に実を包んでいた。

「これでも、流魂街ではご馳走だったんですよ。
勿論、此の木に生っている実は流魂街のものとは比べ物にならないくらい立派ですが。」
「・・・。」
あの子も・・・きっと見つけて食べているでしょうね。」
「そうかもしれぬな。」

「この実が薬にもなっているのであれば・・・
あの子があの土地でも元気でいてくれる手助けをしてくれているかもしれませんね。」
「・・・だろうな。」
・・・せめて、この手で見つけ出すまでは、私も・・・。
今白哉様とこうしてご一緒しているように、あの子と一緒に・・・・」

そういって、懐かしそうに、けれども切なそうにその実を口にした緋真。
そのような彼女を見下ろしながら、私も手渡されたその棗を口にした。

甘くも・・・どこか苦い味がしたような気がする。

緋真の願いは叶うことなく、翌年、私に託されることになってしまった。

**********

「何を持ってきたのだ。」
「乾し棗がお体の優れないときには良い、と侍医に伺いましたので。」
「お前まで私に甘いものを口にさせようと言うのか。」
「お体のためです。
それにしても、本当に兄様はついてないですね・・・折角の御誕生日ですのに。」
「余計な来客を断れるだけ、まだ良い。」

キアが、先日より体調を崩していた私に、苦い薬湯と・・・口直しのための乾し棗を持ってきた。
甘味は好かぬが、口直しとしては干菓子よりは幾分か良い。
それ程に、この薬湯は大層苦いものであった。

「そういえば、侍医の先生が仰っておりました。」
「何をだ。」
「兄様は、この乾し棗ではなくて・・・干す前の生の青い棗を口にされたことがある、と。」
「・・・確かに。」

どのようなお味なのですか?と興味津々といった様相で私に尋ねるルキア。
私は、ふと・・・青い棗の実を食した時のことを思い出していた。

・・・私に青い棗を勧め、共に食したものは・・・皆、私の傍にもう居らぬ。
多かれ少なかれ、私に影響を与えた存在ばかりだ。

一方で、ルキアを預けた経緯もあり、簡単に死なれては困る故に『乾し棗が滋養に効くらしい』、ということで分けてやったことのある浮竹や、四番隊で足りなくなった際に提供した時・・・品質確認と称して一つだけ口にした卯ノ花隊長は、今尚それなりに息災ではあろう。
確かどちらの時も、経緯を忘れたものの乾し棗を一緒に口にする羽目にはなった。

・・・まさか、
・・・いや、それは有り得ぬ。
決して認めるわけには行かぬ。

「お前は、食した事はないのか?」
「はい、もしかしたら・・・其れと知らずに口にしていたかもしれませんが。」
「ならば、今後は一切食わぬ方が良い。」
「何故でしょうか?」

「確かに青い実のままで赤く熟する前の棗も甘く梨のようではあった。
だがしかし青いままの棗の実は種も固く大きく食するところも少ないばかりでなく大量に食すると腹を下すこともあるらしい一方で熟するまで待ち干して乾燥させた棗はその実が薬として役に立つだけでなくお前の好むだろう菓子の材料にも用いられることもあり風味付けにも使われる上干すことによって風味も増しまた甘みも凝縮されるために砂糖を用いるよりも体にもよく・・・」

「・・・様、兄様!!」
「・・・何だ、」
「もう分かりました。生の青い実は兄様のお口には合わなかったのですね。」

ルキアは呆れたように笑っていた。

「何故、笑う?」
「よっぽど嫌な思い出があったのでしょうね、と思って。」

そういいながら私に薬湯を勧め、苦々しい顔をしながら飲み干した私に乾し棗を勧めたルキア。
つだけつまみ、口に含む。

・・・あの青い棗よりも、数段甘く、そして濃い味だ。
だが、体調が優れないためか・・・それでも幾分か、その甘みが快い。

もう一つ如何ですか?と乾し棗を勧めるルキアに、私は「お前が食せばよい」と言う。
やはり兄様は甘味がお好きでないのですね、とルキアは笑う。

・・・違う、だがお前には言うまい。

「ルキア、何があろうとも今後熟しておらぬ青い棗は口にしてはならぬ、良いな。
も二度と口にはせぬし、お前にも勧めぬ。
ましてやお前と共に口にすることも無い。」
「・・・はい。」

偶然だと分かっていても、馬鹿馬鹿しいと我ながら思いながらも、尚、
これ以上は失いたくは無いのだ。


私の痛みを和らげる力の有る、此の存在を。



(『棗』の花言葉:健康・貴方の存在が私の悩みを軽くする)
青い棗を共に食べた者は、皆愛すべき存在であったのに手の届かないところへ行ってしまった。
けれども乾し棗を食したものは皆それなりに今も傍にいる。
たとえ偶然であったとしても、兄様としては・・・ルキアには『おいしいから』と進められても、絶対に口にはしなさそうな感じがします。
彼女がらみのジンクスには敏感でしょうね・・・。

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重ね重ねありがとうございました
こんにちは~!!

先日メールでこの素敵な小品の感動をお伝えしましたので、コチラでは割愛させていただきますが・・・
とっても好きな作品です。
兄様のちょっとしたワガママが愛しくて。

ところで先日塗って下さったイラストとお年賀に頂いた滅却師親子のイラストを先程『分水嶺』で公開させて頂きました。

失礼が在るやもしれませんので、ご多忙とは存じますが一度お目通し下さると幸いです。
ご報告が事後になり申し訳ございません。
ローガン渡久地 URL 2011/02/02(Wed)16:59:18 編集
こちらこそ色々とすみませんでした。。。
こんばんは~
熱が下がってからは一気に元気な状態になっていたので、正直大人しくしているのが嫌だったのですが・・・

>先日メールでこの素敵な小品の感動をお伝えしましたので、コチラでは割愛させていただきますが・・・
>とっても好きな作品です。
>兄様のちょっとしたワガママが愛しくて。

先日はご感想を頂けて嬉しかったです。有難う御座います
支店にupしたものは、もう少し追記が増えてます・・・深く掘り下げているというよりは、あやふやな部分を詳細にした(いや、単に余計な部分が増えたという)感じでしょうか。
ただ、「もう少し(原作に近い)凛々しい表情の兄様を書いてほしい」、というご希望も今回頂いたり、その感想に『もっともだ』と自分でも思ったりしたので、其処は反省しつつ・・・何故か『第二回・朽木祭り』の様相を呈している支店の現状(9ページ目がほぼ朽木家関連)も見ながら色々とやっていけたらなと思っております。


>ところで先日塗って下さったイラストとお年賀に頂いた滅却師親子のイラストを先程『分水嶺』で公開させて頂きました。

・・・すみません、『分水嶺』をあたかもブログジャックしたような状況にしてしまってますね、今
いや、まさかアレも早々に掲載されるなんて思ってもいなくて。。。
(いや、嬉しかったのですが、本当に袋叩きに遭うんじゃないかとヒヤヒヤしながら送信してました。原画の痕跡、無くなってますし。。。)

そして、『縦長になってるっぽいです』の件は・・・やはり拙宅pcさんの環境や一時的なものが起因していたのでしょうね、現在は普通の比率に見えます。
色々とお手数をお掛けして、本当に申し訳御座いませんでした。
さー  【2011/02/07 00:19】
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さー
性別:
女性
職業:
多数?の草鞋履き(最近少し減らしました)
趣味:
読書、音楽弾き聴き、きもの、草いじり、料理、・・・あと、かきものとか。
自己紹介:
諸般の事情から「多数の草鞋」を履くことになってしまった私です。
息抜きとして、日々のことや趣味のことも書けたら良いなと思っています。

☆名前について☆
ここでは“さー”を使っていますが、“さー坊”というのも時折使っております。
(メール送信時は、名字まで付いてます。)
どれでもお好きなものでお呼び下さいませ♪
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